十一屋の住宅

  敷地は名古屋市郊外。東側に祖父が住む母屋があり、母屋と接続した離れに施主は以前住んでいた。その離れのみを建て替えた。南側にはそれなりの広さの前庭があり、北側にはもっと広く鬱蒼とした林があった。南北の庭を整えるとともに庭に対して南北の抜けのある空間とした。
 建物配置は母屋や隣家に影を落とさず、逆に影を受けることもないように壁面線を揃えた。屋根形状は隣家と違うが、ヴォリュームを縦にスライスし、高さを東西建物と揃うようにした。
 内部では西側に天井の高いLDと寝室を重ね、東側に天井の低い水廻りとスタディコーナー等を重ねることで段差をつくり、段差の狭間にある6mの吹抜によって視線のやり取りや採光と通風を行っている。1.5階と吹抜の間にはレースのカーテンを入れることで風のゆらぎを感じ、視線を和らげ、空調効率を上げている。寝室の箱の外側は構造用合板や梁のあらわしとし、軽快な白い空間と対比的に粗野な表情とし、感情的な拠り所としている。
 前庭と裏庭には残土を利用したマウンドをつくり、隣家の植栽と連続させ、道路からの視線を緩和している。

所在地:愛知県名古屋市

構造規模:木造、2階建て

延床面積:126㎡

構造設計:寺戸巽海構造計画工房

キッチン:寿々源

造園:櫻井造景舎

施工:誠和建設

竣工:2016年

写真:谷川ヒロシ