この住宅は周辺環境の微差を丁寧に読み取り、それを切妻屋根の稜線の向きを変えるという単純操作で統合させている。
もっとも大きな要因は敷地南側いっぱいに高層マンションが建っていることである。 そのため、東西面に微妙な角度を持ちながら口を開き、光と日射熱を得ることとした。
しかし、敷地北側には実家が建っている。 自らの敷地は南面採光が難しくとも、実家へ影を落とさないことは家族の協力を得るという面から重要な要件であった。 実家との間に空地を確保し、それをL型プランで囲むことにより共有庭としても活用できるようにした。
南東面は公道という角地で、住宅以外に事務所ビルなどが混在する立地であることから、ささやかなランドマーク性があってもよいと考え、東面をトンガリ屋根とした。
反対の北西側はやや密集する低層住宅地で、西側は旗竿敷地の竿部分に面している。 住宅地に馴染み、隣家への圧迫感をなくすために西面は大らかな切妻屋根とした。
上記のような相容れない複数の要件をシンプルに解決すべく、スタディを重ね、L型平面に切妻屋根をかけ、棟の向きを変えるという形態操作を導いた。 切妻屋根でありながら、見る角度により多様な現れ方をする。
屋根は施工の面でも家具の座りなど生活面においても、床や壁に比べると自由度が高く、古今東西、さまざまな屋根形式が発生している。 寺社建築おいてはむくりや反りといった施工的難易度の高い技術も生まれている。
また屋根は外部の風景をつくるだけではなく、内部天井とも緊密に関係をもつ。 天井は分節しながらつなぐというような曖昧な操作も可能で、居場所の形成にも大きな影響を与える。
屋根を操作することで屋根の下に広がる内外環境を再構築したいと考え、Roof-under Remodelingと名付けた。
所在地:愛知県名古屋市
構造規模:木造、2階建て
未完
写真:谷川ヒロシ