母の墓

 いわゆる洋風の横置きや何かをモチーフとしたデザイン墓ではなく、伝統的な和型をベースにプロポーションを微妙に調整し、石の配置などを変えた。基本的に仏式だが、日本は神仏習合ということもあり、石碑は神道式の細長い七寸角とした。上台や中台はそのまま重ねるのではなく、石碑を守るように囲んでる。囲いが開かれた部分で祈りを迎えるように、水鉢、納骨蓋、拝石が連続して並ぶ。花立も個別につくるのではなく、中台の端部に穴を開けて兼用した。
 色は石碑と納骨蓋がインド産黒御影クンナム、それ以外が中国産御影石G654平和と中央を引き締めている。また両隣の墓石がそれぞれに近い色なので、それらが混じり合い、周辺の「家」とも調和させている。外画も中国産G623磨きと八事霊園という「街」に多い色を使っている。

「建築が芸術といえるのは墓だけだ」アドルフ・ロース

所在地:愛知県名古屋市

構造規模:石造

施工:前野石材店

竣工:2017年

写真:谷川ヒロシ、諸江一紀