ご夫婦は職業柄、生活時間帯や休日が違い、お子さんの人数も関係性もまだわからない。さまざまなライフスタイルに対応するには、みんなが集まる大空間と閉じた個室ではなく、質の違う中くらいの部屋をいくつかつくり、家族のフェーズや季節に応じた選択肢をもたせることが望ましい。あるときはリビングになり、また別のときは寝室になるように。それらの部屋同士が互いに見え隠れするようにゆるやかにつながり、気配は感じるが、活動や休息を阻害しないような関係を目指した。
中庭に面した明るいリビングは天井高と開口高さを絞り込むことで落ち着きをもたせ、寝室は離れのように静かに佇み、敷地高低差を活かした1.5階のダイニングキッチンからは家全体が見渡せ、広くはない子供室は高い天井と大きな窓で開放的につくっている。これら多様な小空間が中庭や玄関ポーチといった外部を絡み取りながら、立体的なS字を描いてひとつのまとまりをつくっている。
所在地:愛知県名古屋市
構造規模:木造、2階建て
延床面積:124㎡
構造設計:ハシゴタカ建築設計事務所 髙見澤孝志
施工:前田工務店
竣工:2017年
写真:山内紀人