施主がかつて住んでいた実家の北側に祖父の家があり、祖父亡き後は空き家となっていた。その空き家を取り壊し、新居を建てることとなった。実家との間には程よい広さの庭があり、道路から見ると庭の先の崖越しに山並みが見え開放感があった。その視線の抜けや風の流れを大切にしたいと考え、ほぼ同じ配置とした。
周辺住宅は2階より1階の方が大きく自然と下屋がつくられていた。要望を整理すると総2階がふさわしいと判断したが、屋根が重なる風景を引き継ぎ、1階の四周に庇を回した。前面道路は細く反対側には擁壁があるが、低い庇により圧迫感が軽減する。南には縁側をつくり、大きい庇を支える垂木は室内まで伸び、構造的に釣り合う。
内庇のような垂木の上には欄間があり、カーテンを閉めても垂木の間から光が漏れ、外を感じられる。外に開くというより、外部が内部に入り込む。垂木を登った先には階段と吹抜があり、空へと続く内向的な開放感がある。
実家との距離感を程よく保ち、風景の差異に引きずられない力強さをめざした。
所在地:愛知県岡崎市
構造規模:木造、2階建て
延床面積:134㎡
構造設計:ハシゴタカ建築設計事務所 髙見澤孝志
造園:moss green ikkei
施工:豊中建設
竣工:2023年
写真:ToLoLo studio