道の家

 この住宅が建つ「天道」という名の街には袋地や急に細くなる道が多い。近くには旧飯田街道が通る。敷地はT字路の突き当りにある。

 そこで住宅にいくつかの道のようなものを通した。

 T字路の突き当りには道と連続し、南北全面開口の趣味室(将来の親の部屋)を設けた。縁側のような土間で周辺住民と関わり合い、奥の坪庭や裏の家まで風が抜ける。

 反対の東側にもトンネルのような大きな土間があり、リビングから生活があふれだす。ここでも敷地裏まで光と風が届くが、この場所は裏の家にとっては表でもある。道路とは逆側の敷地の隅を少しだけ開放的につくり、もしそれらが4軒集まると少し大きな共有のヴォイドができ、それぞれの住宅の環境を良好なものにする。

 住宅の前面には東西に長い土間と階段でつながる立体路地があり、友人や親族を適度に引き込み、人の活動が街から見え隠れする。

 道は人々が出会い、光と風を届け、視界を広げる場であり、街と生活に潤いを与える。

所在地:愛知県豊田市

構造規模:木造、2階建て

延床面積:123㎡

構造設計:ハシゴタカ建築設計事務所 髙見澤孝志

造園:植真 太田造園

施工:誠和建設

竣工:2021年

写真:谷川ヒロシ