敷地は名古屋市中心部、住宅や店舗、事務所などが入り混ざる地域にある。南面する道路に対して塀や壁をつくることなく、適度に開きつつも、内部では喧騒から逃れられる奥のある空間を目指した。
外壁に点在する開口部は大きくなく、周辺住宅で使われているような引違い窓などである。窓の配置や大きさ、窓前の植栽を室内の設えや目線と丁寧に呼応させることで開き加減を調整した。2階には施主のライフスタイルを考慮して、バルコニーではなくサンルームをつくっているが、片持ちとすることで周辺のバルコニーと調和させ、軒の出とともに陰影をつくり出している。玄関は奥まらせて横から入ることで住宅らしさを軽減し、用途が混在する地域にふさわしいファサードとしている。
内部においては中央にOSBの壁でできた箱を置き、その箱を回りながら昇り降りするスキップフロアとしている。箱の内部は和室や趣味室など落ち着きが求められる室を配置している。半階上げることでスタディコーナーや子供室は北側駐車場から、寝室は道路から距離を取っている。箱の最上部はトップライトのある小屋裏空間で、ここが光のリフレクターとなり、北側の部屋や階段を明るくしている。
所在地:愛知県名古屋市
構造規模:木造、2階建て
延床面積:140㎡
構造設計:藤尾建築構造設計事務所
キッチン:キッチンマインド
造園:GROUND
施工:井上工務店
竣工:2016年
写真:山内紀人